ビーチではカラフルなお洋服を着る。いつだってステキでいなくちゃ──。10歳で出版した空想の世界の本『Little Laraland』にはそんな決まりごとが並び、おしゃれな女性たちのイラストが満載です。「みんなが自分のことに自信を持っていて、ハッピーしかない世界なの。心配ごとは『今日はどのハイヒール履こうかな』っていうことくらい」。18歳になったLaraさんは「この本は私のバイブル。大切なことはシンプルであるということを思い出させてくれるの」と語ります。
Laraさんが脚光を浴びたのは2017年。SNSに投稿したイラストが評判となり、当時12歳でバッグブランド「サマンサタバサ」とデザイナー契約を結びました。英語やフランス語、ロシア語、中国語など9カ国語を話す語学力でも注目されました。幼い頃から母親の仕事で海外に行くことが多く、これまでに95カ国を訪問。「その国の人と話をしたい」との動機から、言語を学ぶ楽しさを知っていったそうです。
スイスの高校を卒業し、現在はドイツの大学で医学を学ぶLaraさんは「教育がなければ今の私はいない」と考えます。世界中の誰もが望む教育を受け、自分らしい生き方を選択できる「フェア(公平)」な世界にしたいと言います。
そんな理想の世界に向けて動き出しています。19年にケニアを訪れ、先住民族・マサイ族のアンソニーさんと出会いました。彼は観光ガイドで稼いだお金で、地元の子どもたちの高校進学を支援していましたが、新型コロナウイルスの影響で観光業が打撃を受け、仕事を失いました。窮状を聞いたLaraさんは投資家を募り、観光客がマサイ族の生活を体験できる宿泊施設を運営し、その収入を子どもたちの教育や医療のために使うプロジェクトを立ち上げました。今年の夏ごろにオープン予定です。「学校に行けない世界中の子どもたちに、教育の機会をつくりたい」と言い、オンラインのフリースクール開設も構想します。
平和への願いも強くします。ロシアの侵攻を受けたウクライナに友人がおり、インスタグラムにウクライナ国花のヒマワリと女性のイラストを添えたメッセージを投稿しました。世界では紛争が絶えませんが「アートはユニバーサルな言語で、絵にはパワーがある。世界を素敵にするデザインであふれさせることは、暴力のない平和へのワンステップだと思うのです」と語ります。
デザイナーとしての才能を開花させる一方、医学を勉強するLaraさんは、これからの時代、自分を変え楽しむスキルが必要だと言います。そのために大切なのは「セルフトラスト(自己信頼)」。やりたいことがあれば「できるかなあと不安に思わず、自分を信じて挑戦してほしい」。特に日本は「クリエーティブな人がたくさんいて、今、世界中の人が憧れている国。そういう日本のよさを生かす社会になってほしい」と期待します。
41年に自分が何をしているかはまだ「全くわかりません。だから楽しみ」と言うLaraさん。誰もが自分の求める幸せな形に向けて一歩を踏み出す。セルフトラストに満ちあふれた環境で「世界中の人を笑顔にする仕事をしていたい」と語ります。