未来空想新聞

2040年(令和22年)5月5日(土)

未来空想新聞

2040年(令和22年)5月5日(土)

夢と冒険に憧れる心が未来をつくる

©藤子プロ・小学館

空想からはじまる未来

テクノロジーがひらく世界

関係性をデザインする

人間らしさはどうなるの?

もっと多様な個性へ

わたしたちが未来をつくる


子どもたちの空想をかきたてる作品を

 22世紀につくられたネコ型ロボット・ドラえもんがタイムマシンで未来からのび太のところにやってきて、四次元ポケットからひみつ道具を次々と取り出して助けてくれる。独自の世界観と魅力的なキャラクターたちが織りなす本作品は、世界中の子どもから大人にまで支持され続けています。
 1969年の連載開始以来、希望ある未来を描いてくれるドラえもんとひみつ道具。子どもたちに空想をかきたてる作品を、という藤子・F・不二雄さんの思いから生まれました。今でもさまざまな示唆を与えてくれる藤子さんのことばから、子どもたちに向けたメッセージをご紹介します。

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夢や冒険に憧れる心は失ってほしくない

〜藤子・F・不二雄さんのことばより〜

 「夢と冒険の世界」。この世界こそ、ドラえもんが住むに最もふさわしく、このキャラクターはその為に創られたと言っても言い過ぎではないでしょう。なぜならドラえもんは、きわめて日常的な世界にありながら、絶えずそこから脱出しようとしているキャラクターだからです。夢と冒険は、日常性と対極をなす世界です。だから夢と冒険(SF的冒険も含めて)の世界でのドラえもんは最もいきいきと活躍するのです。

 子どもは冒険を好みます。はいはいができるようになると、(つまり最初の移動手段を獲得すると)とたんに彼等は小さな体を好奇心で一杯にふくらませ、未知なる物への挑戦を開始します。階段をよじ昇り、落ちている小銭を味わい、洗濯機に顔をつっこんだりして大人の肝を冷やすわけです。この止むに止まれぬ衝動、押さえるに押さえ切れないエネルギーが、思えば人類社会を発展させたのかも知れません。だから子どもたちは冒険物語を好みます。ぼくらも例外ではありませんでした。(中略)

 正直な所、ぼくらにとっては、この漫画家になるということが大冒険だったのです。大して才能に恵まれているとも思えず、なんの保証もないのに、まったく未知の世界へととびこんで行ったわけですから。

 今や読む立場から書く立場へ、一八〇度の大転換です。気が多いものですから色んなジャンルの漫画を手がけてきましたが、やはり書いていて楽しいのは、冒険的な要素をたっぷり含んだ物ということになります。そしてドラえもんのポケットは、この開発されつくした地球の上にも、探査され生物の存在を否定された太陽系宇宙の中にも、夢と冒険の世界を作り出すことができるのです。

 子どもは成長するにつれ、彼等を取りまく日常性の中に取りこまれ順応して行くわけですが、夢と冒険に憧れる心は失って欲しくないと思います。そしてその中から21世紀なりの冒険家が現れることを期待します。

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 現在、世の中には暗い未来を感じさせるニュースも少なくありません。だからこそ、より良い未来を空想し、それに向かって行動することで希望に満ちた未来に近づいていけるのではないでしょうか。5月5日のこどもの日に、空想を広げて未来について考えてみませんか。

「藤子・F・不二雄 大全集『ドラえもん』7巻」(小学館)より

藤子・F・不二雄
Fujiko F Fujio

1933年12月1日、富山県高岡市に生まれる。51年、『天使の玉ちゃん』で漫画家デビュー。54年、小学校の同級生だった安孫子素雄とともに上京し、〝藤子不二雄″として本格的に活動する。87年にコンビを解消し、〝藤子・F・不二雄″として『大長編ドラえもん』を中心に執筆活動を続け、児童漫画の新時代を築く。主な代表作は『オバケのQ太郎(共著)』『ドラえもん』『パーマン』『キテレツ大百科』『SF短編』シリーズなど。代表作『ドラえもん』は、多くの国で翻訳され、今もなお、世界中の子どもたちに、読み続けられている。