未来空想新聞

2040年(令和22年)5月5日(土)

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2040年(令和22年)5月5日(土)

「白上フブキ」を体験するデバイス、世界で流行

「他者の感覚」を追体験、思いやりや相互理解広がる

佐久間洋司×白上フブキ

佐久間洋司×白上フブキ バーチャル対談

 バーチャル空間で身体(からだ)を持ち、ファンと交流する「VTuber」の活躍は、今やすっかり日常となりました。エンターテインメントの最先端とも言えるVTuberや、AI技術は、未来をどのように形づくるのでしょうか。国内外のファンに愛されるVTuberの白上フブキさんと、バーチャルビーイングを研究し、2025年大阪・関西万博ではVTuberも含むバーチャルコンテンツのディレクションを担う佐久間洋司さんが、それぞれの立場から語り合いました。

アバターが自分を変える

 白上さんが考えるバーチャルの良さとは、誰でも、現実の制約を飛び越えて、どんな存在にでもなれることだと言います。

 「小さい頃、みんな『ヒーローや魔法少女になりたい!』って憧れますよね。今はバーチャルなら、なろうと思えばなれるんですよ。私のファンの方々にも、『自分もいつかはこうなりたい』という憧れの気持ちで見てくれている人が多いと感じます」

 佐久間さんは、そんな白上さんたちVTuberの存在を「かつてないエンターテインメント」と評します。「バーチャルだけど、確かに日常にあたり前に存在している」そのあり方について、白上さんは「元から日常にいたように、気軽に接してほしい。そう思ってもらえるように、飾らず自然体で振る舞っています」。

 佐久間さんは、アバターが人間の心理や行動に影響を与える「プロテウス効果」を例に、バーチャルが未来に与える希望を語ります。

 「若者が高齢の方のアバターを操作すると高齢者に寛容になったりすることも知られています。同じ物を持っても、力持ちの男性のアバターだと軽く感じて、子どものアバターだと重く感じたりも。思いやりや想像のきっかけになるこうした効果を、相互理解のために初対面の相手に対しても使えるようにする研究などをしています」

 白上さん自身も、VTuberとして活動を続ける中で自分自身にも変化を感じたと言います。「元々は人と話したり大勢の前で歌ったりすることは得意じゃなかった。でもVTuberとしておしゃべりするようになって、応援に支えられて自信が持てるようになった。今の自分がとても好きです」と語ります。

 白上さんは昨年、日本AED財団の救命サポーターに就任し、AEDの啓発活動をしています。「発信できる立場だからこそ、私がきっかけで興味を持ってくれる人がいたらいいなと思ってやっています」。佐久間さんは「社会的に大事なことでも、お説教のようになってしまうと伝わらない。白上さんのような人が入り口になることで、若い人たちの関心が広がると思う」とVTuberの可能性に期待を込めます。

AIで拡張していく白上フブキ

 VTuberやアバターは、未来に向かってどのように発展していくのでしょうか。佐久間さんが予測するのは、「私の拡張」としてのAI技術。

 「AIが私たちになりきって自律的に行動してくれることもあると思います。たとえば、白上さんの言動を学習したAIが、ファンの一人ひとりとインタラクティブに交流しているかもしれない」

 そんな想像に白上さんは「AIが私のふりをして活躍していると想像すると、私が増えたみたいでうれしいですね。でも、性能が上がるにつれて、自分で自分に嫉妬しちゃったりするかも」と冗談交じりに返しました。

 そんな2人に、2040年を予想してもらいました。

 白上さんは「デバイスを抜け出して街中を歩いているかも。ホログラムで車の助手席でカーナビになったり、工事現場のアシスタントとして働いたり。根本は私のまま、いろんな私がいろんな所でいろんな人の前に存在できちゃっていたら面白いですよね!」。

 佐久間さんは「自分の代わりになるAIとともに生きたり、時には誰かのアバターを操作したりする不思議な体験を通じて、今より少しだけ人々がわかり合えるようになっているかもしれません。そんなバーチャルビーイングの研究を通じて、調和に満ちた世界に貢献していたいです」。

佐久間洋司
SAKUMA Hiroshi

1996年、東京都生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程在学中。バーチャルビーイングを相互理解に役立てる研究に取り組み、2025年大阪・関西万博に出展されるバーチャル大阪パビリオンではディレクターを務める。Web3時代のIP開発を目指す深化(FUKAIKA)ボードメンバー。日本オープンイノベーション大賞 文部科学大臣賞などを受賞。人工知能学会 産業界連携委員。

白上フブキ
SHIRAKAMI Fubuki

白い髪とケモミミがトレードマークの“狐っ娘”バーチャルYouTuber(VTuber)、バーチャルアイドル。女性VTuberグループ「ホロライブ」の1期生兼ゲーマーズ。2018年、カバー株式会社が開催した専属VTuberオーディションに応募、同年よりTwitter、YouTubeなどで活動を開始。ゲーム実況やライブなど、幅広いジャンルで配信を行う。YouTubeチャンネル登録者数は210万人を突破(2023年5月5日現在)、国内外に多くのファンを抱えている。

子どもたちへのメッセージ

技術が夢をかなえる時代、なりたい自分を持つことが大事。自分の感性を育てよう。(佐久間)夢が実現できる未来はすぐそこ。小さい頃に見た夢を忘れない大人になってください。(白上)