未来空想新聞

2040年(令和22年)5月5日(土)

未来空想新聞

2040年(令和22年)5月5日(土)

国家消滅、地球会議始まる

高齢者の自立支援にテクノロジーを活用

若宮正子

 現在88歳の若宮正子さんは、60歳を過ぎてからパソコンを独学。70代で表計算ソフト「エクセル」のマス目に色をつけてデザインを楽しむ「エクセルアート」を考案し、81歳でゲームアプリ「hinadan」を開発しました。若宮さんにとって新しいテクノロジーは、「ある日ピヨッと出てくる面白いもの」。マニュアルは読まずに、とりあえず使ってみるのが楽しむコツです。「私が今着ているシャツも、『エクセル』で作ったもの。自由にあれこれ触っていたら、マス目に色をつけられることに気づいて夢中になりました」

 そう話す若宮さんの腕にはスマートウォッチが。「心電図のデータもとれるから、とても便利。今後拡大が予想される遠隔医療でも役立つはずです。高齢者にこそ使ってほしいですね」

 とはいえ、シニア世代の中にはデジタル機器に苦手意識を持つ人もいます。「気持ちはわかりますが、少子高齢化が進む日本では高齢者のケアに人手を割くのは難しい。そこで、私たちを助けてくれるのがテクノロジーです」。歩行器のような移動支援機器や、見守りロボット、補聴器などは、加齢で低下する人間の機能を補ってくれるもの。「自立して少しでも長く社会参加したほうが、家でじっとしているよりきっと楽しいですよ」

テクノロジーの進化で変わる社会

若宮正子

 高校卒業後に就職した銀行で、計算機が導入されたときの衝撃を若宮さんは今も鮮明に覚えています。「私はソロバンが苦手でしたが、機械化されてソロバンの能力は仕事の評価に関係なくなりました。社会や企業にとって必要な人は、時代とともに変わると実感した出来事でした」

 テクノロジーによって、社会はまた変わろうとしています。「私にAIやChat GPTが使いこなせるかは別として、新しい可能性が広がることにワクワクします。AIを使えば、プログラム言語を知らない人でもアプリが作れる時代だからこそ、これからはより一層、何を作りたいかという人間の意志が大事になります。どれだけAIが知識豊富でも、何をしたいかのアイデアを出すのは人間にしかできないことですから」

人のにおいがしない社会は寂しい

若宮正子

 2040年の社会がどうなるか、若宮さんに聞きました。「いずれ国家は無くなり、好きな場所で暮らせる時代が来ると考えています。物事が目まぐるしく変わる時代は身軽な組織のほうが有利なので、国のように大きな共同体は消滅すると思うんです。それで、私たちはみんな『地球在住人類』になる。新聞には『今月の地球会議の予定』が載っていて、鉄道を残したい会支部とか、教師の会支部とか、各支部の会議の中から興味のあるものを選んで、世界中の誰もが自由にオンラインで参加できるようになったらいいですね。同時通訳だから、言葉の壁もありません」

 若宮さんがこの先も大切にしたいのは「人との交流」です。「タブレットで注文できる飲食店やセルフレジは便利だし、変わっていく社会は楽しみです。でも、社会から人のにおいが全然しなくなったら寂しい。人と直接交流できる場は残していきたいですね」

 そんな若宮さんが子どもたちに贈る言葉は、「多様な経験をしましょう」。「小学校から大学までの6・3・3・4制から離れて、自由に進路を選んでください。高校進学前に、海外に行くのもいいですね。何事も計画通りにいかない時代ですから、柔軟に対応できる人間的な魅力や英知を高めるといいと思います。大人に反対されても、それは前の世代の常識だから大丈夫。未来の常識はきっとまた変わります」

若宮正子
WAKAMIYA Masako

ITエヴァンジェリスト。1935年、東京都出身。高校卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。定年を機にパソコンのスキルを独習。81歳でゲームアプリ「hinadan」を開発し、2017年にアップル社の世界開発者会議「WWDC」に招待された。現在は、NPO法人ブロードバンドスクール協会理事、一般社団法人メロウ倶楽部理事のほか、デジタル庁デジタル社会構想会議など、国のデジタル分野の機関の構成員を複数務める。

子どもたちへのメッセージ

学校では、勉強する大切さや楽しさを学んでください。先生や親の意見はあくまでも参考程度に。自分の将来は自分の頭で考えましょう。