シェアタウンが健康寿命を延伸か
「R65不動産がなくなっている未来が理想です」
そう語るのは、高齢者向け賃貸住宅サービス「R65不動産」の代表、山本遼さん。「高齢の方が住まいを借りる難しさを解消したい」と起業して8年。状況は徐々に変わってきていると語ります。
「地域差はあるものの、大家さんが高齢の方に貸してくれる確率は上がっています。体感では3%だったのが6%くらい。今は健康寿命が延びていて、80代でもやりがいを持って元気に働く人もいます。R65不動産も将来的には、R100不動産に名前を変えているかもしれませんね」
物件の大家が高齢者を避ける大きな理由のひとつは「孤独死」への不安。R65不動産は、電気の使用状況で安否を判断する「見守りサービス」を導入することで、その不安を解消しています。今後は大家や不動産会社とのパートナーシップをさらに強化し、高齢者が物件探しで困らない未来をつくりたいと考える山本さん。最近では、家だけでなく「町」にも興味が出てきたそうです。
「町づくりというと不動産会社や行政が率先するイメージですが、もっと簡単でいい。たとえば僕が東京・北千住で運営する棚貸しの書店では、地域に住む60〜70代の方が多く来ていて、棚を借りながらお店番をしてくれるんです。これもひとつの町づくり。彼らは他の棚の本を買うこともあって、ビジネスでありコミュニティーでもあるんです。土地の縁ではなく、自分の興味があるものでつながる『知縁』も大事だと思っています」
高齢者が家を借りやすくなった先にあるR65不動産の課題は、孤独の解消です。
「僕はすべての問題が起因するのは孤独だと思っています。棚貸し書店のように楽しい場所が増えれば町も面白くなるので、そんな『町と楽しく関われる場』をたくさんつくっていきたいですね」
そこで出会った人々が支え合う町、言わば知縁でつながるシェアタウン。必要としている人同士がつながって互いの連帯保証人になる互助会や、シングルマザー同士が保育園に送迎し合うコミュニティーなど、山本さんの夢は広がります。
「私の祖母は亡くなる2年前まで、家業の薬局で働いていました。お金のためではなく、自分らしく生きるため。健康なまま過ごすには、自分の生活を選択し続けられることが大切なんだと思います」
山本 遼
YAMAMOTO Ryo- 1990年生まれ、広島県出身。愛媛大学卒業後、愛媛県内の不動産会社に就職。全社トップの営業成績を残し、同社の東京拠点立ち上げに参画した後、2016年に株式会社R65(R65不動産)を設立。65歳以上の部屋探し専門不動産会社として、年間300件以上の物件仲介を支援するほか、「高齢者賃貸」に関する講演なども行っている。