「想いの乗ったお金」が人と課題結ぶ
貧困や気候変動といった社会課題の解決が、経済的な利益ももたらす「市場」になり、担い手となる人材とお金が続々と流れ込んでいく──。クラウドファンディング事業(クラファン)を運営するREADYFOR CEOの米良はるかさんは、こんな未来を思い描きます。
「従来の資本主義社会では、難病治療薬の開発のようなニーズが限られる課題はお金が集まりづらく、公的資金に依存しがちでした。しかし国家財政がひっ迫する中、こうした領域にも『民のお金』が必要です」
クラファンの仕組みは、描く未来を実現するための第一歩。「何かしたい」という意志を持つ人が、大きな負債やリスクを負わなくても、託されたお金を使ってチャレンジできるようになりました。
社会貢献事業に私財を投じる富裕層だけでなく、遺贈を希望する高齢者、そしてごく普通の会社員や若者にも「自分のお金の一部を、社会を良くするために使いたい」と願う人はたくさんいます。コロナ禍でも、医療従事者やNPOへ寄付することで「『自分には何もできない』という無力感が薄れ、気持ちが救われた」という声が、READYFORに多数寄せられたそうです。
READYFORは事業を通じて、さまざまなセクターの関係者とネットワークを築き、社会課題解決の担い手たちを「目利き」する力も養ってきました。それらを駆使して最もスピーディーに課題解決に近づけるような「透明性の高いお金の流れ」を生み出そうとしています。「人の想いの乗ったお金と、課題解決に取り組む研究者や企業、NPOを結び付け、協働して『良い社会』へ向かう仕組みをつくるのが、私たちの役割。それによってポジティブな社会的インパクトを生み出そうとしています」
少子化問題に国家財政の先細り、不透明さを増す国際情勢など、予測される未来は決して明るいばかりではありません。しかし米良さんは、「若い世代には社会に山積する課題を、ゲームのダンジョンのような『クリアするとレベルアップできるハードル』ととらえて挑戦してほしい」と話します。「そのためにも次世代には、課題を面白がれるような、余裕と明るさのある社会を渡したいのです」
人々が自分にとって価値があることに取り組み、個人の幸せと「社会課題解決市場」全体の成長が両立できるような空気感をつくりたいと、米良さんは望みます。ただ、だからといって彼らに「あとはよろしく」と丸投げするつもりもないと言います。
「若い人にはどんどん打席に立ってもらいたいですが、上の世代もそれぞれやるべきことに取り組まなければ。だから次世代には『みんなで一緒に、できることを精一杯頑張りましょう』と伝えたいです」
米良はるか
MERA Haruka- 1987年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修了。2011年3月、ウェブベンチャーの1事業として日本初のクラウドファンディングサービス「READYFOR」を立ち上げる。14年に株式会社化しCEOに就任。日本人史上最年少でダボス会議に参加し、政府の「新しい資本主義実現会議」など、多くの会議で民間議員を歴任している。