未来空想新聞

2040年(令和22年)5月5日(土)

未来空想新聞

2040年(令和22年)5月5日(土)

微生物多様性で住まい選び

100年先の「多様性を超える多様性」

伊藤光平

 研究者でベンチャー企業「BIOTA」代表の伊藤光平さんは、「都市の微生物多様性」の重要さを提唱しています。「人間中心に見えるこの世界には、目には見えないけれど多様な微生物が存在して、私たちのくらしに密接に関わっています」と語ります。

 その微生物の多様性が今、都市部で失われています。自然の減少に加え「無菌」前提の建築志向や、コロナ禍による「除菌」が背景といいます。「除菌では、無害な他の微生物も消えてしまう。微生物にもおのおのの役割があり、『多様』がいいのは人間だけではない。『無菌』環境でも一歩外に出れば数百、数千の微生物があふれているので、諦めが必要です。微生物との『共生』こそ持続可能。人間の体も約40兆個のヒト細胞に対して微生物は38兆個くらい。微生物がいることで世界が回っているのは事実です」

伊藤光平

 伊藤さんは、技術を使ってつくる微生物多様性にも期待しています。「微生物は人間よりはるか昔から地球に住んでいる。人間とはまったく違うスケール感を持つ存在です。でも人間はプリミティブ(原始)に回帰せずとも、微生物多様性を実現できる。さらには高層マンション上層階の“縁側”に多様な植栽を配置した都市型の生態系をつくるなど、人間の技術や知能で『自然の多様性を超える多様性』をつくる、それが希望です」

 一方で、「人々が『微生物多様性が本当に重要だ』と感じるようになるためには、50年とか100年とかのスパンで考えること。自分が死ぬまでにそんな文化を根付かせ、次の世代につなげたい」という伊藤さん。

 「たとえば微生物多様性の高さで不動産価値が変わる社会。さらにヒューマンスケールで空間を区切らず、微生物多様性が担保された街や村ができたらいいですね。まずは都市インフラとしての微生物多様性を認知してもらうことが大切です」

伊藤光平

伊藤光平
ITO Kohei

1996年生まれ。山形県出身。高校時代から同県の慶應義塾大学先端生命科学研究所で特別研究生。同大学環境情報学部卒。専門は微生物学。2019年「BIOTA」を設立。建築業界や酒造業界とも連携して事業をしている。世界を変える30歳未満の30人「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2018」選出。100BANCH GARAGE Program8期生。日本科学未来館「セカイは微生物に満ちている」監修。

子どもたちへのメッセージ

自分の世界観をしっかり構築して。やりたいことを、気のおもむくままにやってほしい。