死語ランキング1位「セルフラブ」
「自己肯定感やセルフラブなんて言葉は無くなってほしい。死語ランキング1位セルフラブ、2位マジ卍(まんじ)とか、2040年にはそんなニュースが見たいです」。芸人のバービーさんは、「誰かが作ったブームや価値観に惑わされない人が増えてほしい」と考えています。
「仮にセルフラブのコツがあったとして、それに倣ってもその人の本質は変わらないと思うんです。なりたい自分があるなら、自力で試行錯誤し続けるほうが大事な気がします」
自分の顔を複数持つと強くなれる
今のバービーさんは、メディアで社会課題について発信したり、町おこしに携わったりと、芸人の枠にとらわれない活動をしていますが、それはもがき続けたからひらけた道だと言います。「うつうつと過ごした10代、お下劣芸人をやっていた20代、それに疲れた30歳前後。〝最終的に生きてりゃ良くない?〞の感覚だけは通底していたからずっとポジティブで、大変なことが起きても『これは成功するに違いない』と思っていたし、失敗もいい思い出に上塗りしていました」
さまざまなコミュニティーに参加して、芸人・バービー以外の顔を見せられる場所を増やしていくうちに、なりたい自分とパブリックイメージのズレは無くなりました。「やりたいことは堂々と主張したほうが自分にとってもいいし、周りとのコミュニケーションもスムーズになると気がつきました」
「私はSNSの裏アカウントも複数持っていますが、ネットの世界でもいいので、仕事や家以外のいろんな場所に柱を立てていくと、自分に〝面〞としての広がりが出て、100人乗っても大丈夫なくらいの土台ができます。最初の一歩を踏み出すのが怖ければ、外の人が見つけてくれた自分の可能性に乗っかってみるのもいいと思う。まだ自分には見えていない可能性が、他の人からは見えていることもあるから」
粘り強くサバイバルで生きていく力を
国内外に拠点を設けてコスモポリタン的な生活を送るのが、バービーさんの夢。「2040年だと私は56歳だから、立てた柱も安定しているはず。60歳に向けて、残す柱の吟味をはじめたいですね。その頃には温暖化の問題は解決済みであってほしいし、どれだけ食べても満腹にならない道具も発明されていてほしいな」
「今の子どもたちは、私たちの時代よりも失敗できない環境にいると感じます。だけど、挫折や失敗ってそんなに害でしょうか。誰も傷つかない社会は確かに理想だけど、無菌状態では人は生きられない。相手を尊重したいのに、意図せず傷つけてしまうことだってありますよね。自分と違う価値観を害とみなす風潮があるのも、多様性に逆行しているようで気になります。どんなに気をつけても理不尽なことは起こるから、何度転んでも立ち上がって、粘り強く生きるサバイバル能力を身につけることが大切だと思うんです。この能力があれば、周りにあふれる情報の真偽を見極める目も養われるはずです」
バービー
Barbie- 芸人。1984年、北海道出身。2007年、お笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。現在はテレビのコメンテーターやラジオパーソナリティーとしても活躍。19年12月からはじめた「FRaU web」での連載「本音の置き場所」では、自分の思いや考えをつづり、共感を呼んでいる。地元・北海道栗山町の町おこしにも注力。