同性婚認められ出生率アップ
「17年後の未来、まったく想像できません。なぜなら10年前にここまでLGBTQの認知が上がっていることは想像もできなかったから」。NPO法人東京レインボープライド共同代表理事の杉山文野さんは話します。ルーズソックス姿の女子高校生時代を経て男性として生きる選択をし、今、パートナーの女性との間に2人のお子さんをもうけています。
「それでも、まだ課題はあります。その筆頭が法整備。『国民は皆平等』と言いながら、結婚できる人とできない人がいる。これは裏を返せば『国民の中にLGBTQは含まれていない』ということ。それが根強い差別や偏見につながっていく。社会を構成する骨組みが正しい位置に戻らなければ、痛みは取れないんです」
婚姻の平等、LGBT差別禁止法、性同一性障害特例法の条件緩和。この三つは必ずクリアしなければいけない、と杉山さん。
「自分の子どもがLGBTQで『なぜ自分は結婚できないの?』と言われ、『マイノリティーに生まれたんだから我慢しなさい』と言えるでしょうか。僕は言いたくはない。子どもがこうありたいと思ったときに立ちはだかる壁は取り除いてあげたい」
LGBTQや同性婚に否定的な人たちについて「批判するのではなく受け止めること」だと杉山さん。「僕らもあなたと『家族を大事にする』思いは変わらない。対面してそう話すと理解してもらえることも多い。僕の知人は『今もLGBTQはよくわからないけど、お前と仲良くなったからなぁ』と、パレードで一緒に歩いてくれるようになりました。『身近に当事者がいた』というだけでも感覚が変わるのだと思います。LGBTQの問題だけでなく、誰でも高齢者になるし、明日から車椅子生活になるかもしれない。当事者になってから声を上げるのか、当事者になる前に声を上げるのか。環境問題を訴えるときにまず足元のゴミを拾うように、一人ひとりが自分にできることを日々積み重ねることで、望む社会をつくることができるはず。2040年は、環境問題などの人命に関わる問題が解決していることを前提としたうえで人権が守られている時代になっているといいなと思います」
杉山文野
SUGIYAMA Fumino- 1981年、東京都生まれ。フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院修了。卒業後に世界約50カ国と南極を巡る。現在はLGBTQの情報発信活動などを行う。NPO法人東京レインボープライドの共同代表理事を務め、講演会やメディア出演などで活躍。パートナーとの間に2児をもうけ、精子提供者である友人と共に3人親として子育てを行う。著書に『3人で親になってみた ママとパパ、ときどきゴンちゃん』など。