平均キャリア数が10超える
楽しそうな笑顔で、朗らかにピアノを弾く姿が印象的なポップスピアニスト、ハラミちゃん。実は、ピアニストを目指し音大に進学したものの断念し、IT会社に勤めた経験が。
「会社になじめるか、業務についていけるかすごく不安でした。1カ月働く自信もなく、定期券が無駄になるのを恐れて毎日切符を買っていたくらい(笑)」
現在のはつらつとした姿からは想像もつかないエピソードですが、入社して「労働」のイメージが大きく覆ったそう。
「学生のとき、『労働』って、厳しい業務に耐えた対価としてお金を得るものだと思っていました。でも、先輩に仕事を教えてもらうと期待に応えたくなるし、お客様が気持ちよくサービスを使ってくださると頑張りたくなる。働くって、恩返しみたいなもので、思っていたよりずっとハートフルだったんです」
挫折=ゼロ、ではない
「人に恵まれて充実した生活でしたが、数年働くと『また音楽やりたいな』って、ふつふつと出てくるんですよね。でも、恥ずかしいし勇気がでなかった」
体調を崩して休職していたとき、先輩に誘われてストリートピアノを弾いたのが現在のハラミちゃんの活動につながっています。
「挫折って、全てがリセットされてゼロになってしまうイメージがあるけれど本当は違う。必ず経験が自分の中に残り続けるので、いつか掛け算され、つながって、何かに結実するときが来るんだと思います。だから私は一回距離を置いたり、別の世界に行ってみる『寄り道推奨派』です」
AIが発達すれば、多くの分野で学びの効率や仕事のクオリティーが上がり、夢をかなえるスピードが早くなる人が増えるのでは、とハラミちゃんは空想します。
「一生この仕事をする、という生き方だけでなく、大人も興味関心が移ろいながら学校や塾に行って学び続けることが増えると思う。それをみんなで認め合える世界になったらいいですね。継続こそ美徳という価値観がまだ根強いですが、2040年は人生を何度もやり直したり、夢を持ち直したりするスタイルが主流になるのでは」
種まきの気持ちで本気で向き合って
「夢」という言葉からは壮大なイメージを抱きがち。「キラキラしすぎて、『夢はありますか?』と聞かれても正直困るって人多いと思うんですよ」とハラミちゃん。
「これが好き、これをやってみたい、というレベルで大丈夫。人に言うのはハードルが高いけれど、自分には決してうそはつかず、心の中で『音楽が好き』と宣言するだけでもいい。私は『優れるな、異なれ』という言葉が好きです」
たとえ一度夢と距離を置き、寄り道をしたとしても、道は続いている。目の前の出来事に全力で取り組めば目の前がひらける、と子どもたちへメッセージを送ります。
「学生さんは、自分は今種をまいているんだという気持ちで、真剣にいろんなことに向き合ってみて。まいていた種が育ち、やがて花が咲く。適当に種まきをしていると、将来『何も咲いていない!』ということになってしまいます。大人も、今からでも遅くないです。私も今だって種をまこうと思っていますよ」
ハラミちゃん
HARAMI chan- YouTubeを中心に活躍するポップスピアニスト。ピアニストを目指して音大に進学するも、一度は夢を諦めて会社員へ。その後、東京都庁やさまざまな駅でのストリートピアノ動画が人気を博し、2019年から「ハラミちゃん」として本格的に活動を開始し、累計再生回数6億回を超える。有名人気楽曲のカバーだけでなく「雨」「947」などのオリジナル楽曲の制作も手がける。現在は、会場ごとに違う47セットリストの47都道府県ツアーを実施中。